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アップサイクルの可能性と未来

産業廃棄物を利用したアクセサリーキットブランド「 mato(u)real 」の提案
17Z1-054 黒﨑 結梨花
日本人は廃棄物問題への認識が甘い。そのため、廃棄物の現状についての理解を促し、その問題と向き合う姿勢を醸成することが必要だと考えた。そこでアップサイクルの考えを元に、廃材を利用したアクセサリー作成キットを販売するブランド「mato(u)real」を提案する。
ブランディング作る環境(問題)
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廃棄物への理解を促し、問題と向き合う姿勢を醸成するポイント

 廃棄物の現状についての理解を促し、その問題と向き合う姿勢を醸成するためのポイントは3つあると考える。
 まず1つが「アップサイクル[※1]の考えを根付かせること」である。この考えは、モノを捨てない生活に興味を持たせる、モノを捨てない生活ができるということを人々に気づかせる可能性を秘めているからだ。例えば、首都高速株式会社が行ったサーキュレーション首都高[※2]という面白いアップサイクルの取り組みを見ると、モノを捨てない生活に興味が湧くことだろう。
 2つ目のポイントは「モノを捨てないためのアイデアを提供すること」である。それは廃棄物問題に向き合おうとしても、アイデアが浮かばずに行動に移せない人が多いためだ。私が行ったアンケートによると「不要なものを二次活用していますか?」という問いに「いいえ」と答えた方は79.5%。その中で多かった意見が、廃棄物活用の「アイデアが思いつかない」「やり方が分からない」という事だった。
 3つ目のポイントは、「製作者と廃棄素材を繋げる場を提供すること」である。なぜならアップサイクルを促進していくために、アップサイクルに興味を促す魅力的な製品を世の中に増やしていくためだ。ニッセイ基礎研究所研究員の塩澤誠一郎氏は、製作者と廃棄素材を繋げる場を作ることが、そういった製品を増やすことに繋がることを指摘している[※3]。
 以上の廃棄物の現状について理解を促し、その問題と向き合う姿勢を醸成するための3つのポイントを兼ね備えた商品ブランドが「mato(u)real」である。

※1 アップサイクル
元の形状や特徴などを活かしつつ、新しいアイデアで、不要なものを捨てずに別のモノに生まれ変わらせる考え方。

※2 サーキュレーション首都高
首都高速株式会社
https://www.shutoko.jp/ss/c-shutoko/(閲覧日:2021/1/20)

※3 塩澤誠一郎『「つくる」と「すてる」をつなぐ仕事』ニッセイ基礎研究所、2013年
塩澤氏は「廃棄素材と製作者をつなぐ場を設けることで、新たな価値を持ったモノづくりに挑戦するクリエイターが増え、魅力的な製品が生まれる可能性が高まる」と言う。

産業廃棄物に新たな命を宿す「mato(u)real」

 「mato(u)real」は廃材を利用したアクセサリー作成キットを販売する。ターゲットは20~30代女性。FNNプライムオンが行った意識調査によると、この年代の女性が環境問題に対しての意識が一番低いからである[※4]。また販売方法は、公式webサイトやショッピングアプリ「BASE」、東急ハンズ等のアクセサリーパーツ売り場を考えている[※5]。価格は手に取りやすいよう500円とした[※6] 。
 商品は、購入者が制作者として、廃プラスチックやシートベルトをピアスに作り替える、アップサイクルするものとなっている。
 また内容物としては購入者が選んだアクセサリーパーツの他に、取扱説明書や本製品の作り方、アップサイクルの考え方を紹介する冊子「アップサイクルブック」も同封する。
 購入者は、アップサイクルし、アクセサリーを制作する体験を通じて、廃棄素材を活用する、つまりモノを捨てないアイデアを得ることになる。また同時にこの制作体験は、廃棄素材とつながる場ともなる。更にアップサイクルブックによってアップサイクルの考えを理解し、制作体験を通じて、その考えを自分の物にする機会を得ることとなる[※7]。
 以上のように「mato(u)real」は「製作者と廃棄素材を繋げる場を提供すること」、「アップサイクルの考えを根付かせること」、「モノを捨てないためのアイデアを提供すること」の3つのポイントを兼ね備えた商品を提供する。

※4 FNNプライムオン URL:https://www.fnn.jp/articles/-/23343(閲覧日:2020/11/30)
FNNプライムオンが行った「エコ活動・SDGs」への意識調査によると、「エコ活動に関心がある」と答えた18~29才女性は22.2%と、この年代の女性は環境問題に対しての意識が一番低い。

※5 ショッピングアプリ「BASE」アイコン https://binc.jp/brand-guideline(閲覧日:2021/1/13)
「BASE」を選んだ理由は、自粛期間でEC市場の需要が高まり、流通総額が大幅増加していて、消費者を多く獲得できる可能性があるため。

※6 キットは初心者向けのものから、アイロンやレジンを使う中級者向けの商品まで幅広く取り扱う。作業時間はどれも~15分程度。アップサイクルハンドメイドを通して個人のスキルアップもできる仕組みにしたい。

※7 mato(u)realの仕組み

「mato(u)real」が実現する未来

 3つのポイントを兼ね備えた商品によって、廃棄物の現状について理解を促し、その問題と向き合う姿勢を醸成することを実現したい。素材本来を纏う「mato(u)real」は、一人一人のアイデアで廃棄物が新たな価値を持ったモノに生まれ変わる、そんな社会を作る無限大の可能性を秘めていると考えている。アップサイクルが主流となり、廃棄物が減少していく未来には美しい地球が存在すると私は信じている。

※ mato(u)realは自社工場を持たない「ファブレス経営」。アクセサリーキットの梱包や郵送工程を福祉施設に外注することで、工場設備費用を抑えられる。SDGsの「人や国の不平等をなくそう」でも目標となっている障がいを持つ方の雇用を増やす利点もある。

黒﨑 結梨花

好きな授業
プロダクトデザインC、マッスルUSBという破天荒な商品が完売できたから。
土田ゼミ、土田先生と仲間達の支えがなかったら私はここに居ません❤︎

学部を振り返って
とても刺激的な4年間を過ごせたと思います。沢山の経験を身につけた日々や、切磋琢磨できる友達、本当の自分のやりたい事に出会えて幸せでした。本当に卒業したくない。

学部で身につけた力
どんなことにも責任を持って最後まで取り組む忍耐力や、ニッチな観点から物事を考える発想力を身につけました。
また、作品制作を通して(これでもか!ってくらいの)自己表現力も身についたと思います。