カテゴリー
暮らし

美しい形態を持った照明器具の研究

17Z1-110 福嶌 知聖
照明が好きで照明器具を作りたいと思っていたが、「何に魅力を感じるのだろう」「なぜ惹かれるのだろう」と考える中で、「美しいとは何だろう」と疑問が湧いた。そこで、形態の印象に関する先行調査を基に複数の照明モデル画像を作成し、印象評価実験を行った。得られた結果からガラスと木材を用いて黄金比及び球の形態を持った照明器具を提案する。
心理作る雑貨
プレゼン動画を見る!

形態と印象に関する調査

 四角形の縦横比に対する印象について調査をした先行研究では、東京工芸大学牟田准教授が日本人を対象とした実験では正方形が一番美しい印象が高い結果を示し、19世紀に精神物理学者フェヒナーが行った研究では黄金比(1:1.62)が美しい印象が高い結果を示している。また、日本人を対象とした調査で白銀比(1:1.43)を美しいと評価した研究(中村滋)もある。
 対称性(シンメトリ)は自然界の動植物の形態などに頻繁にみられる、美の重要な要素と考えられている。非対称なもの(アシンメトリ)よりも対称的なものの方が好まれやすいと言われ、例えばウェブサイト画面の対称性と美しさの関係を検討した研究においても、全体として左右対称なデザインの方がより美しいと評価されている。
 生きている化石と呼ばれているオウム貝は成長するにつれて螺旋状に部屋をつくっていき、隣り合った部屋の体積比は黄金比になっている。さらに、フラクタル構造に見られる自己相似形の関係もみられる。フラクタルとは全体の構造が部分の繰り返しによって構成されるパターンのことで、自然界にも数多く存在して人々に美しさや快さを与えると考えられている。代表的な例として、木の枝、波、雲、葉脈などが挙げられる。
 近現代の照明器具を収集した冊子(Charlot&Peter Fiell: 1000LIGHTS, Vol.2, TASCHEN, 2005)掲載の469作品を対象として、照明器具の特徴的な要素と形態意匠を分類した先行研究(加藤里美ほか)では、円柱の形を持つ照明器具が一番多く、その次に丸(球)の形を持つ照明器具が多いことが報告されていた。

フェヒナーが実施した縦横比と印象評価実験の結果。東京工芸大学牟田准教授が上記のようにグラフ化した結果では全体の約3割の人が黄金比を美しいと回答し、一番割合が多い結果となった。(牟田淳:日本人の好きな形における比率の研究、2017年)

近現代の照明器具を対象に形態分類した図 (加藤里美、堀越哲美:照明器具の特徴要素抽出による形態意匠の分類、2013年)

形態に関する印象評価の実験

 形態に関する調査に基づき正方形・黄金比・白銀比・長い長方形・アシンメトリ・円柱・球・螺旋の8つの照明モデル画像を作成し、それぞれの印象を調査する印象評価の実験を実施した。実験は20歳から22歳の大学生15人(男性10人:女性5人)を対象に実施した。上図のように、左に照明モデル、右に評価尺度を配置した画像を用意し、8つの形態照明モデルをそれぞれの実験協力者にランダムに提⽰した。評価尺度については形態の美しさに関わる調査に基づいて「美しい-醜い」「快い-不快」「魅⼒がある-魅⼒がない」「馴染みがある-⽬新しい」「⾃然な-⼈⼯的な」を選定し、5段階で評価してもらった。
 右に示すグラフのように、「美しい-醜い」の評価項目において「美しい」という評価が一番高かく示されたのは「球」だった。さらに球は「快い-不快」「魅力がある-魅力がない」においても「快い」「魅力がある」といった評価が高く示された。先行調査で美しいと示されていた「正方形」「黄金比」「白銀比」は「美しい」という評価があまり高くなかった。「白銀比」においては「快い」「魅力がある」という評価が低い結果となった。一方で、黄金比は「快い」「魅力がある」の評価が比較的高く、「馴染みがある」「自然な」という印象についても高評価であった。オウム貝の構造に着目した「螺旋」は「美しい」という項目が2番目に高く、「目新しい」「人工的な」という印象も高くなった。

提示した8つの照明モデル画像

5段階評定の平均値を比較した実験結果

美しい形態を持った照明器具の提案

 球は「美しい」という評価だけでなく「快い」「魅力がある」という評価も高く示されており、黄金比は「快い」「魅力がある」「馴染みがある」「自然な」という全体を通しての評価が高かったことから、球および黄金比の形態を持った照明器具を提案する。また、素材に関する先行研究に基づき、ガラスと木材を使用する。

素材に対する印象評価の実験結果(左:ガラス、右:木材)
金属、アクリル、木材、布、セラミック、プラスチック、革,ガラスの8つの素材が持つ印象を20の評価項目から調査した研究では、ガラスが最も美しい印象を与える結果が示されていた。また、「親しみがある」「自然な」において共に評価が高かったのが木材であった。日常的に使う照明器具に親しみや自然な印象を取り入れる為には木材が適していると考えた。(李美龍、島田亮、成田吉弘:異素材の組み合わせがモノの「おしゃれ感」に与える影響、2017年)

福嶌 知聖

好きな授業
私が好きな授業は、「デザイン概論」です。1年生の時の授業で、デザインとは何か?を教えてもらい、衝撃を受けたからです。この授業をきっかけにデザインをよく知るようになりました。

学部を振り返って
プレゼンテーションやチームで行う授業が多く、人と話すのが苦手な自分は最初は苦痛でした。ですが、数をこなすほど次第に慣れていき、今では緊張せずに人前で話すことができるようになりました。どの授業もとても面白かったです。

学部で身に付けた力
私が学部で身に付けた力はコミュニケーション力です。学部に入学する前は人と話すのが苦手でしたが、様々な授業や国際交流、学外活動を通してコミュニケーション力を身に付ける事が出来ました。卒業後も新たな目標に向けて頑張っていきたいです。