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心と体

インターモダリティで伝達コミュニケーション

17Z1-119 宮崎 絵虹
人と接する時のちょっとした動きや言葉が気になることがある。そしてふとした時にある特定の言葉や音などに対して頭の中で視覚的なイメージが浮かぶことがある。この感覚はインターモダリティと呼ばれ、調査を通してこれらの研究を始めた。この過程より他者を意識してコミュニケーションについて考える機会を作る豆本制作の企画を提案する。
コミュニケーション心理
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共感覚とインターモダリティ

 共感覚とは、文字や音、匂いなどに色や形を感じる性質のことである。神経の病気と見なされているにも関わらず、DSM[※1]やICD[※2]には掲載されていない。その理由として、共感覚が日常生活を送る上で問題を引き起こすことがないとされているからである。共感覚者によるとこの症状は計算を解く際に見える色が邪魔してすんなりと計算ができないことがあるようだ。
 共感覚を利用した実験では久留米大学が2010年に行った、ストループ課題とポップアウト課題が挙げられる。ストループ課題[※3]とは、ストループ効果を用いたものである。提示されたものに対して色名に対応した色を選び、共感覚者と一般感覚者を比較する実験を行う。またポップアウト課題とは、ポップアウト刺激を用いたものである。たくさん散りばめられた文字の中から「あ」の集まりで形成される図形(三角形)を見つけ出す問題である。
 インターモダリティ(通様相性)とは、共感覚的表現であり、共感覚とはまた別の分類である。視覚、聴覚、触覚などの感覚で、相互影響が現れる現象を通様相性またはインターモダリティと呼ぶ。「黄色い声」や「雪のように白い肌」といった異なる感覚同士を混合させた表現のことを指す。インターモダリティを利用した実験は「ブーバ・キキ」が挙げられる。[※4]研究方法として、まず二つの図を用意し、それぞれ曲線図形と尖った図形を提示しどちらが「ブーバ」でどちらが「キキ」の図形であるのかを答えてもらう。その結果、98%が曲線図形を「ブーバ」と答え、尖った図形を「キキ」と答える結果となった。
 そしてこの先行調査で得た共感覚とインターモダリティについて、自身の周りで感じていることを調査するために10代〜40代の男女50人にアンケート調査を行なった。共感覚とインターモダリティの認知度の集計結果、インターモダリティよりも共感覚のほうが認知は高い結果となった。「特定の数字や文字に色を感じたことはありますか?」という共感覚についての質問に対して、50人中17人が「はい」と回答した。その内7人は特定の数字や文字に対して必ず同じ色に見えると回答した。共感覚者の可能性があるのはこの7人であり、他の者はインターモダリティに分類される。共感覚とインターモダリティの認知ありなしに関わらず、特定の数字や文字に色を感じることがあるということがわかった。

※1 DSM(精神障害診断便覧)
うつ病などの精神疾患や発達障害の診断の際に判断する世界的な診断基準。

※2 ICD(国際疾病分類)
WHOが作成する国際的に統一した基準で定められた死因及び疾病の分類。

※3 今村義臣・木藤恒夫「数字や文字に色を見る共感覚者」久留米大学心理学研究、第9号、2010年、20、21ページ

※4 長田典子「音を聴くと色が見える:共感覚のクロスモダリティ」日本色彩学会誌、第34巻第4号、2010年、352ページ

「ブーバ・キキ」実験の図 https://mag.sendenkaigi.comより筆者作成

「特定特定の数字や文字に色を感じたことはありますか?」に対してのアンケート結果。

感情をビジュアル化

 これまでの調査を元に、身体的な感覚や傾向を見るためのアンケートを行った。「感情をビジュアル化」というフォーマットを作成し、デザイン学部の学生、13人に協力をお願いした。このアンケートは自分がイメージする感情を枠内に描いてもらう内容となっている。今回選んだ感情は「嬉しい」「愛しい」「憎い」「悔しい」「悲しい」「怖い」「楽しい」「面白い」の8つであり、喜怒哀楽を参考に感情の選出を行なった。アンケートを描くにあたって色、線の太さ、大きさ等は枠内であれば自由であり、より表現をわかりやすくするため、必ず着色してもらうようお願いをした。
 アンケート結果から、ある特定の感情に対し、人々の共通する具体的なイメージがあることわかった。考えられる理由として追加調査を行った結果、2点原因として考えられるのではないかという結論に至った。
 1点目は日頃よく目にする広告やテレビ、WEB、漫画といった様々なメディアの影響である。今回行ったアンケート内容では「愛しい」と「悲しい」の表現方法が特徴的であった。「愛しい」は13人中12人、「悲しい」は13人中11人と多数が同じ形と色で示している。様々なメディアを通して普段目にする機会が多いために皆の中で共通の感情表現として表されているのではないかと考える。
 2点目は人が典型的な形に安心感や好意的な感覚を持つことが挙げられるのではないかと考える。デザインにおいて形や色が典型的であるほど、人が頭の中で情報処理を円滑に行うことができるという研究結果もある。「ハート」と「しずく」に関しても「愛しい=ハート」、「悲しい=しずく」がすでに結びついていたのではないかと考えた。これは上記で挙げたメディアでの影響に付随してイコールで結ばれるという情報処理が成され、且つ「ハート」「しずく」はとても典型的な形であるため多数の者が同じ形と色で示していたのではないかと考えられる。

愛しいは13人中12人、悲しいは13人中11人と多数が同じ形と色で感情を表している。

感情を覗き見る豆本

 このアンケート調査の結果をまとめ、感情を覗き見るというコンセプトで豆本を企画した。今回の調査結果は、どれもまったく同じものはなく人によってそれぞれ異なっていた。このようなちょっとした違いも人の数ほどあるため、他者の感覚を覗き見るような本を制作したいと考えた。この豆本により、人とのコミュニケーションについて考える機会を作り出すことができるのではないかと考える。

宮崎 絵虹

好きな授業
私が好きな授業は「コンピュータ表現基礎実習」です。1年生が履修する科目であり、PhotoshopとIllustratorを学びます。元々Photoshopを使用していましたが、初めてのIllustrator含め、新たな表現方法を知り、とても楽しい授業だと感じました。

学部を振り返って
明星大学のデザイン学部で学ぶことができてとてもよかったと心から思っています。最初はデザイン関連ということに関心を抱くだけでした。けれど、企画やプレゼンという最も大切である軸から学ぶことができて、有意義な学生生活を送ることができたと思います。

学部で身につけた力
人前に立つことの緊張感への対応方法を身につけることができたのではないかと感じます。幼少期は人前に立って発表することに冷や汗が止まらないほどでした。学部で場数を踏むことができ、ほどよい緊張感をもつことができたと思っています。