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企業における直感と創造

直感を活用した企業戦略
17Z1-044 川島 輝真
日本企業が革新的な製品を生み出せないのはなぜなのだろうか。革新的な製品はどのように生まれるのだろうか。こうした素朴な疑問から論文を書き始めた。アメリカの企業アップル と比較し、日本の企業との根本的な違いとは何か。また、日本の企業が革新的な製品を生み出すにはどのようにしたら良いのかを考察する。
能力ブランディング社会
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Appleと日本企業の製品の違い

 私たち人間は、生まれてから死ぬまで数え切れないほどの道具を使う。今多くの人が使っている、スマートフォンもその一つだ。この小さな機械はある企業によって開発されており、その企業はこれによって莫大な富を得ている。その企業の名前はAppleという。Appleはそれまでも、たくさんの革新的な製品を数多く出しており、日々の生活に新しい可能性をもたらしている。そこでふと思ったのだ。革新的な製品が生まれるのはいつもアメリカなど外国からではないだろうか。なぜ日本からは、そういった製品は生まれないのだろうと。
 まず、革新的製品を多く生み出している企業であるAppleについて調べることにした。Appleの代表的な製品といえば、1998年に発売されたiMac、2001年にはiPod、そして、2007年に発売され今もなお多くの人が使っているiPhoneが挙げられる。では、これらの製品と日本の製品との違いはなんなのだろうか。
 同年に発売されたシャープのW52SHと初代iPhoneを比較していく。W52SHは当時ニーズが高かったとされる機能などをしっかり揃えていることが人気の理由だったとされている。一方、iPhoneはW52SHとは異なり、横に大きく、ワンセグはない。では、なぜiPhoneは世界で覇権を握ることになったのだろうか。私は全く新しいデザインと、拡張性の高さだと考える。当時の携帯電話は大きな画面であることが必要とされ、それでいて、小型であることが要求された。これらの両立をする上で、多くの企業は、画面を大きくし、薄く、折りたためるようにすることでその問題を解決した。しかしiPhoneはキーボードをなくすといった、全く別の視点から画面を大きくする事に成功した。拡張性の高さとはそのままの意味で、ニーズに合った使い方ができると言うことだ。キーボード1つとったとしても、スワイプ入力やローマ字入力など様々な形のキーボードを使うことができる。

W52SH(ダブリュ ゴーニー エスエイチ)
シャープが日本国内向けに開発した携帯電話。

iPone(アイフォーン)
2007年6月アメリカで発売されたスマートフォン。

直感の有用性

 このような全く新しい拡張性のある、革新的デザインを作り上げるには直感を介した思考が必要不可欠ではないかと考える。
 1995年に行われたスティーブジョブス「※1」へのインタビューで「正しい方向かどうかはどうすればわかりますか」と言う質問に「究極的な美意識の問題だね」と答えているように、アップルは美意識。つまり、直感を舵としていたのだ。
 ディクステルホイス[※2]が2006年に行った実験では、参加者が4台の車の中から好ましい車を選ぶ課題を行った。参加者はそれぞれ4つの観点から車の特徴を提示される条件と、12の観点で特徴を提示される条件に分けられ、さらにそこから車の観点を読んだ後、4分間考えてから判断を行うチームと、車の観点を読んだ後4分間、車とは全く関係のない課題を行うチームに分かれた。その結果、12の観点を教えられたのち、車とは関係のない課題を行ったチーム(図右下)が最も妥当な選択をしていることがわかった。
 このことから、判断する基準が多ければ多いほど無意識的、つまり直感の優位性が高まると言うことが示唆される。
 現在の社会は日本がバブル経済で急成長していた1990年頃とは違い、ものが溢れかえってきていることから判断条件が多くなってきている。よって、直感の必要性が上がり、論理に偏った生産をする日本企業は日本の域を出ないままなのだ。

※1 スティーブジョブス(Steve Jobs)
スティーブウォズニアックとともにAppleを創設したカリスマ経営者。

※2 ディクステルホイス(Dijksterhuis)
オランダの教授、起業家、講演者、作家。

日本企業がイノベーションを起こすには

 ここまでで日本企業とAppleの違いそして、それらの違いは美意識、直感にあるものだと考察してきた。ここからは日本企業が直感を生かした製品を作るにはどうしたら良いかを自分なりに考察していく。
 日本の一般的な企業は製造プロセスにおいて、大量に出したアイデアの中から良いアイディアを残してふるいにかける、アイデアスクリーニングを行うのだが、直感的アイデアは振り落とされやすいといった問題がある。そこでここでもアップルはどのような製品開発プロセスをたどっているのか調べてみることにした。日本の一般的な企業との違いはアイディアスクリーニングが抜けていると言う点だ。アイデア探求の段階で多くのアイデアを生むのではなく優れた少数のアイデアのみを製品コンセプトの段階に持っていく。こうすることによって直感的な優れたアイデアが振り落とされない仕組みをしているわけだ。とはいっても日本企業がこのまま真似すればアップルのような製品が作れるかと言ったらそうではない。そこで、私が提案したいのはインナーブランディングだ。インナーブランディングというのは社内で企業のブランド理念を一致させることにある。社員の意思統一がなされれば、アイディアスクリーニングの段階で理念に沿った優れた直感的アイデアが振り落とされないのではないかと考えた。

川島 輝真

好きな授業
マンガデザインです。僕はあまりマンガを読む方ではないですが、ストーリーの伝えかたや、魅力的なキャラの作りかた、絵コンテの描きかたはとても興味深かったです。

学部を振り返って
デザイン学部はユニークな学生も多く、楽しく生活できました。手を動かすことが好きな自分にとって、座学だけでないこの学部は、自分にも合っていたと感じています。

学部で身につけた力
伝達力です。「伝えることくらいできる」と、入学前は思っていましたが、いざ授業を受けてみると思い違いでした。社会に出る前にこうしたことを学べたのは幸運だったと感じています。