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個性あふれるこの社会での道標

ADHDの人たちに向けた手帳アプリMother
17Z1-032 鬼丸 俊希
近年、大人でも診断されるケースが増えてきた発達障害「ADHD」。増えてきている今なおADHDに関してあまり知られていないのが現実である。本研究では、実際にADHDである私がこれまでの経験を活かし、ADHDの人たちが暮らしやすい社会になるための手助けをしたいと考え、手帳アプリを提案する。
心理アプリ社会
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研究を始めたきっかけ

 私は8歳の時にADHDと診断され、そこから約14年ADHDと向き合ってきました。
 ADHDとは、発達障害のひとつであり、集中力、注意力がない不注意、落ち着きがない多動、欲求が満たされないとイライラしやすい衝動性などの症状があります。私が8歳で診断されたように、元々は小児の頃に診断されることが多いものですが、近年では大学生、社会人など、成人近くの年齢になってからADHDと診断されるケースも増えてきています。
 このように大人になってからADHDと診断されるケースが増えてきたこと、また、近年では著名人がADHDと診断されたり、診断を受けていたことを公表したりすることもあり、テレビ番組やSNSなどでADHDという言葉を目にする機会が増えてきましたが、ADHDというものが実際どのような発達障害なのか、ADHDの人たちとはどのように向き合っていけばいいのかまで理解している人が多くないのが現実です。実際、私がADHDと診断されてからは周りからのサポートもあり、生活することができましたが、それでも不便なこと、周りの人からADHDに関して理解してもらえないこともありました。
 卒業研究を行うにあたり、ADHDの当事者であり、14年という長い期間向き合ってきた私だからこそ、ADHDの人たちの悩みを解決し、サポートする研究ができるのではないか。この研究を通し、ADHDの人たちのサポートをしつつ、ADHDに関して多くの人に理解してもらい、ADHDの人たちがより暮らしやすい社会になる手助けができるのではないか。そう思い、この研究を行うことにしました。

手帳アプリ「Mother」の機能説明

 今回私が提案する手帳アプリ「Mother」はADHDの不注意の症状の緩和に焦点を当てて企画しました。不注意に焦点を当てたのには理由があります。ADHDの症状の中で不注意の症状は多動、衝動性などの他の症状と比べ、道具での緩和が見込め、特に手帳アプリなどの認識、確認といったことで症状の緩和に繋げられるのではないかと考え、不注意の症状に焦点を当てることにしました。
 「Mother」には通知機能、カレンダー機能、メモ機能に他の手帳アプリと違った特徴があります。
 不注意の症状で忘れやすいというものがあり、その症状緩和のために認知させることが重要だと思い、通知機能に力を入れました。通知機能では通知に関する様々な設定などを行うことができます。バイブの強弱に関する設定やアラームに関する設定ができます。アラームは既存の音楽からiTunesやMUSICなど、自身のスマホに入れているアプリと連動して設定することができます。また、バイブとアラームの2つを組み合わせたセット機能に関する設定などもできます。
 ADHDの症状の一つで優先順位をつけにくいというものがあり、色分けして優先順位をつけやすくすると良いと考え、カレンダー機能ではマーキング機能を搭載しました。カレンダー機能では予定を色別にマーキングすることができます。優先順位をつけたり、種類別で色を変えることにより、より予定を認識しやすくなっています。また、指定した日の1時間単位での予定の追加ができます。
 メモ機能では「とりあえずメモ」というオリジナルのメモ機能を搭載しています。とりあえずメモは最初に、聞いたことなどをメモ内に書き込み、メモに書き込んだものに文字色をつけたり、ブロックごとに書き込んだ内容を分け、とりあえずメモに書き込んだ情報を整理します。私もよくあるのですが、一度に多くのことを聞くと、情報を頭の中で整理できず、パニックになるので、まずはひたすら書き込むことを優先し、書き込んだ情報を後から整理するという方法をとりました。この方法ならば私のようにパニックになってしまったり、焦ってメモが取れなかったりするといったトラブルの回避にもつながると考えました。この他にも、スマホの操作に慣れていない人などのために、専用のメモ用紙を用意しました。アプリのカメラでメモ用紙を読み込むことで、PDFとして保存することもできます。

通知機能ではバイブやアラーム、セット機能といった通知に関する設定ができます。

カレンダー機能では予定を色別にマーキング、1時間単位での予定の追加ができます。

メモ機能ではとりあえずメモやとりあえずメモの管理、メモのPDFスキャンや保管ができます。

「Mother」のプロモーション企画

 このアプリの提案と合わせて、プロモーション企画も考えました。
 本研究の目標は「ADHDの人たちが暮らしやすい社会を作るサポート」であり、そのためにはADHDの人たちの直接のサポートだけでなく、周りの人にADHDについて知ってもらい、理解してもらうことも大切だと考え、手帳アプリの提案だけでなくプロモーション企画も提案することにしました。
 プロモーション企画はSNSやネット記事を利用した宣伝、YouTubeのレビュー動画、テレビのニュース番組の特集の3つを企画しました。
 SNSやネット記事はインターネットやスマホが発達した現代において宣伝力が強いと考えました。実際、ADHDという発達障害の名前が知られるようになった背景にSNSやネット記事といったものもあり、Twitterのトレンドに入ることもあるなど、多くの人の目につくようになっています。このように、拡散力が強いSNSなどを利用することで、より多くの人に認知してもらえると考え企画しました。
 YouTubeのレビュー動画は、近年スマホの普及等によりYouTubeが発展しており、有名動画投稿者のレビュー動画などは宣伝効果だけでなく、紹介するものの特徴や安全性などの証明にもなるので、より詳しくわかりやすく宣伝ができると考え企画しました。
 テレビのニュース番組の特集は、先程の2つが主に若い年齢層をターゲットにしたものに対し、中年層以降の人たちをターゲットに考えました。近年のニュース番組を視聴する年齢層を調べたアンケート調査では、10代20代などの若い年齢層の人よりも、30代以上の中年層以降の人が視聴していることが多いという結果が出ています。なので、ニュースなどで取り上げてもらうことにより、様々な年齢層の人に知ってもらうことができると考えて企画しました。

鬼丸 俊希

好きな授業
好きな授業はマンガデザインA〜Cです。ストーリー構成のやり方やキャラクター設定のやり方や、メディア関係やどのように相手に自分が伝えたいことを明確に伝えるかなども学べました。この授業ではよく百合作品を作っていました。

学部を振り返って
最初はデザインに関してあまり興味がなく、ほとんど無知の状態で入りましたが、学部のみんなと切磋琢磨し、デザインに関する様々な知識を身につけ、デザイン力だけでなく、人としても大きく成長できたと思います。

学部で身につけた力
学部ではプレゼン力、企画力を身に付けることができました。必修科目である企画表現演習では、プレゼンや企画といった企画力等を鍛える授業があり、少し大変でしたが、それを乗り越えプレゼン力、企画力が身についたと実感しています。