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バーチャルイベント会場「Tsukimi Museum」の提案

17Z1-015 井上 泰斗
これは、私が取り組んだ「VR」、「SNS」、「Cluster」の3つの研究から生まれた提案です。会場の立地場所に関する「地域の格差」と新型コロナウイルス禍における「精神的疲労」といった二つの課題を「見る」、「眺める」、「遊ぶ」の3つの要素を取り入れた新しい「バーチャル展示会場」で解決できないかと考えました。
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バーチャル空間を活用したい

私は、もともとVR技術に興味があったので、その調査に取り組みました。すると、VR技術は建築や医療、エンタメなどすでに様々な業界で使われていることを知りました。しかし、それは現実で起こりうることのシミュレーションにすぎず、バーチャルである意味がないことに気づきました。そこで、バーチャル空間だからこそ可能な仕組みや表現方法を活用できないかと考えました。その時、clusterというバーチャルSNSを発見しました。これは、ゲームのようなバーチャル空間にアバターとして参加し、その場所で同じ参加者と出会えるVR型のSNSです。アバターとして参加しているので、従来のSNSよりもリアルに人と関わっている感じを味わうことができます。また、自分が作成した会場で「イベント」や「個展」を開いて他の参加者を呼んだり、他の参加者が作成した会場に遊びに行ったりすることができるので、様々な使い方が可能です。このclusterを使って、会場の立地場所に関する地域格差と新型コロナウイルス禍における精神的疲労の2つの課題を改善する「Tsukimi Museum」を提案します。「Tsukimi Museum」は「Earth」と「Moon」の2つの会場で構成されています。

Tsukimi Museumの会場(Earth)

Earthは、他の参加者と交流し社会からの疎外感を抑制することを目的とした会場です。この会場は、他の参加者と触れ合うことができる「広場エリア」や展示作品を鑑賞できる「展示エリア」、主催者のプレゼンテーションや説明会が行える「プレゼンエリア」といった3つのエリアで構成しています。会場には、「パーティクル」という指定された3D モデルを発生させて動かす仕組みを導入し、動きのある空間演出にしています。この企画では、虹色の「蝶」と水色の「雲」のパーティクルを使い、幻想的な世界を表現しています。また、一般財団法人MOA 健康科学センターに所属する内田誠也氏の「庭園や美術品の鑑賞による癒しが人の心理や生理に及ぼす効果」の研究結果を応用し、広場から月エリアを眺めることができるようにすることで、「月見」という形で鑑賞による癒しの効果を加えました。さらに、Earthの展示パネルは、裏面が見えないようになっていて、展示パネルの裏面が発生させる「見えにくい」や「邪魔」といったストレスが起こらないようになっています[注1、2]。

注1 裏面が見える場合
このように裏面が見えると奥が見えづらくなってしまいストレスを感じてしまいます。

注2 裏面が見えない場合
裏面を見えないようにすることで奥の景色を眺められるスッキリとした空間になりました。

Tsukimi Museumの会場(Moon)

Moonは、自由に遊んでストレスを解消することを目的とした会場です。この会場は、ゆっくり移動する展示作品を鑑賞できる「展示エリア」、ボールを転がして遊ぶことができる「ボールエリア」の2つのエリアで構成しています。この会場では「空へ登る雪」や「蝶」のパーティクルなど、VRならではの非現実的な表現方法を取り入れています。また、Moonの展示パネルは、A の球体を軸として時計回りに移動するようになっています[注3]。展示パネルは、プレイヤーからは宙に浮きながら回転しているように見えます。さらに、上空に「花火」のパーティクルを使用し、眺めることでストレスを解消できるような工夫もしました[注4]。
 このように、新型コロナ禍での外出自粛による外部環境と切り離されたような生活空間 において、心理的圧迫感やストレスを強く感じずに快適に過ごせるようにするための策として、様々な研究や事例を参考に展示会場を幻想的な空間に仕上げました。これにより、癒し空間となった会場の中で作品を鑑賞することができるため、リラックス効果が期待できます。また、会場内での人との交流によって社会からの疎外感を抑制する効果も期待できます。

注3 移動する展示パネルの天井伏図
移動速度を遅くして、見る際に疲れることがないようにしました。

注4 花火のパーティクル
打ち上げ花火を表現したパーティクルが、上空で色や大きさを変えながら光ります。

井上 泰斗

好きな授業
私の好きな授業は「企画表現演習2」です。この授業は、アイデアの発想法を学び、実際にアイデアを出すための訓練にも取り組むことができる授業でとても勉強になります。アイデアを考えることに興味がある人にとてもオススメの授業です。

学部を振り返って
デザイン学部では、インテリアやグラフィックなど分野に必要な知識や技術の基礎と企画を提案するための知識や技術を同時に学ぶ事が出来ます。今では、自分で新しい企画をしてそれを採用してもらうための提案まで行えるようになりました。

学部で身につけた力
私は、アイデアを形にするための基礎的な知識や技術を習得するためにデザイン学部へ入学しました。実際に、ポスターやリーフレット、3Dモデル、ショーウィンドウディスプレイの模型などを作成し、様々なツールの使い方を学ぶことが出来ました。