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教育

ジブリ飯を用いた家庭科副読本の企画提案

17Z1-101 西川 未紗
子ども達が食育についての知識や理解を深めることを可能にするための研究を行なった。研究から家庭環境や家庭科の授業内容により、食育に関する知識と興味に差が見られた。子ども達に食育に関して興味を持ってもらうきっかけとしてジブリのアニメーション映画に出てくる料理、通称「ジブリ飯」をテーマとする副読本を企画提案した。
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食育に関する意識と教育現場の食育の現状

 「食育」とは食育基本法[※1]において、「子どもたちが豊かな人間性をはぐくみ、生きる力を身に付けていくためには、何よりも 『食』が重要である」とした上で、「生きる上での基本であって、知育、徳育及び体育の基礎となるべきもの」とし、「様々な経験を通じて『食』に関する知識と『食』を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てること」と位置付けている。
 農林水産省が令和2年3月に発表した『食育に関する意識調査報告書』では、生活習慣病の予防や改善のために、ふだんから適正体重の維持や減塩などに気を付けた食生活を「実践している」とする人の割合は 67.4%であり、年齢が高いほど「実践している」と回答している人の割合が高い。特に、若い世代(20~39歳)の男性では「実践していない」と回答した人が6割と高い傾向であった。「実践していない」と答えた人に、実践していない理由を聞いたところ、「面倒だから取り組まない」を挙げた人の割合が47.1%と最も高い結果となっている。[※2]
 現在、都立高校の家庭科教員として勤務し、小学校の家庭科の非常勤経験がある村山由美さんにインタヴューを行なった。東京都の小学校では図画工作の展覧会が2.3年に1回開かれるので、展覧会に展示するクッション、エプロン、カバンなどに時間が裂かれる傾向があることがあることや、家庭科の教員はそれぞれ食物、被服、住空間などの専門があり、教員や地域により授業にばらつきがあることがわかった。そのため学校での食育の取り組みについて差が見られるようだ。

※1 食育基本法
平成17年6月10日、第162回国会で食育基本法が成立し、 同年7月15日から実施された。
また、この法律が制定された目的は、国民が生涯にわたって 健全な心身を培い、豊かな人間性を育むことができるようにするため食育を総合的、計画的に推進することにある。

※2 農林水産業の『食育に関する意識調査報告書』「生活習慣病の予防や改善のために、ふだんから適正体重の維持や減塩などに気をつけた食生活を実践 しているか」の調査(調査結果より筆者作成)https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/ishiki/r02/pdf/houkoku_2_5.pdf

アンケートからわかったこと

 10代〜40代、70人にSNSを通して食育に関してアンケートを行なった。
「あなたが食育を受けたと思う場面はどこですか」という質問では「学校」と答えた人が約半数近い47.1%という結果になった。このことから、やはり家庭科の授業の食育の役割は大きいものと考えられる。「親」と答えた人は34.3%という結果になった。しかし、「受けたと思う場面はない」と答えた人は8.6%という結果となった。インタビューからわかったように、家庭科の授業内容のばらつきが原因で、小学校の家庭科での食育、調理での項目を習ったことをそもそも「食育」と認知していない可能性が考えられた。

「あなたが食育を受けたと思う場面はどこですか」アンケート結果

栄養はええよ!

 調査から家庭科の授業で食育についての取り組み方は教員の専門科目や授業スケジュール、地域差によってバラバラなことが明らかになった。また、アンケートから多くの人が食育を受けたと思う場面は「学校」と回答した。
 これらのことから、義務教育で家庭科を学ぶ小学校5.6年生を対象とした「栄養はええよ!」という副読本を企画した。子どもたちが食に対して楽しく興味を持ちやすいよう、食に関する身近なコンテンツがないか調査した際、世界中で人気のあるスタジオジブリ[※3]のアニメーション映画が適しているのではないかと考えた。そこで劇中に出てくる料理、通称「ジブリ飯」[※4]をテーマとした。
 義務教育の中で食育に積極的に取り組むことにより、家庭内の経済的な差から起きる学習格差を減らすことができ、食についての知識や理解を深めることができるのではないかと考えた。
 教材の構成として、左ページに作中に出てくる料理で使用されている食材を示し、家庭科の授業で学習する五大栄養素の表を見ながら、足りていない栄養素を考え、シールを貼っていく仕様である。右側のページでは、足りない栄養素を使った献立を示し、その献立にはどのような栄養素が使われているか考え、シールを貼って学ぶという流れになってる。
 この副読本では、農林水産業が薦める、身に付けたいとされる「食」に関する能力の「体に良い食べ物を選ぶ力を養い、自分の体にとって必要な食べ物をバランスよく食べているかを判断する能力」[※5]を身に付けることを目的としている。
 食に関する意識を向上させ、食育に繋がるような教材を作成することにより、次世代を担う子ども達が、経済格差や家庭環境に関係なく、食についての知識や理解を深めることを可能にし「人生にとって有意義な食育」を広めることができるのではないかと考える。

※3 スタジオジブリ
「風の谷のナウシカ」の興行的成功を機に、「天空の城ラピュタ」製作時の1985年に「風の谷のナウシカ」を製作した出版社・徳間書店が中心となり設立したアニメーション・スタジオ。2020年9月から作品の場面写真を順次WEBサイトで公開し、常識の範囲内で使用を認めているhttps://www.ghibli.jp

※4 ジブリ飯
SNSでも「ジブリ飯」という名前で、作品上に出てくる食事の再現が行われており、注目を集めている

表紙のデザイン。副読本のサイズはランドセルに入りやすいB5とした。

※5 農林水産業における身に付けたいとされる「食」に関する能力(調査より筆者作成)https://www.maff.go.jp/kinki/syouhi/seikatu/syokuiku/pdf/tebikisyo2.pdf

西川 未紗

好きな授業
私が好きな授業は、「クラフトとデザインA」です。竹からスプーンを作る際に、どのような人がどんな場面でスプーンを使うかなどデザインの根本的な「人のため」を実技を通して学べるからです。

学部を振り返って
企画表現演習5など模型工作室で制作物を作る際に違う班でも協力をし、目標に向かって共に頑張ろうとするのがデザイン学部の良いところだと振り返ります。

学部で身につけた力
企画表現演習では世の中の物や企画がどのようにして作られているかを学べたのは大きな力となりました。企画表現演習と合わせ、グラフィックやブランディングなどを学んだことで視覚的に「伝える」技術も身につけられました。