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キャラクターデザインを知る・つくる・描く

17Z1-092 常松 柚香
キャラクターデザインと絵柄に悩んでいる人のために、作成の参考になる知識や方法論を、人体の各パーツごとにまとめテキスト化した「キャラクターデザインを知る・つくる・描く」を企画提案します。その中から、第一弾として「眼」に着眼点を置いたキャラクターデザインと絵柄についての内容を、紹介します。
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人相学を利用した眼のキャラクターデザイン

 眼のキャラクターデザインに人相学を利用した理由は、視覚からの情報が8割以上を占める人間にとって、ヒトの第一印象を決定するのは人相だと考えたからです。
 人相学の研究は、人相の特徴を記号として捉えることで、それを使用し根拠のあるキャラクターデザインを作成できるようにすることを目的にはじめました。そして、今回は2つの人相の特徴を利用し、実際に作成したキャラクターデザインを用いながら「人相学を利用した眼のキャラクターデザイン」についての研究内容や作成の仕方などを解説します。
 今回解説に使用する人相は、「大きい眼(軽眼/ケイガン)」「小さい眼(重眼/ジュウガン)」と「目尻の下がった人」「目尻の上がった人」です。人相学では「大きい眼(軽眼)」は「性格は明朗で社交性があり、博愛主義。社会性がある反面、軽佻浮薄で喜怒哀楽が顔に出やすい。」とされ、「小さい眼(重眼)」は「質実剛健で意志が強く、忍耐力、持続力を持っている。また団結心も強い人である。欠点は、猜疑心(サイギシン)が強く、保守的で執念深く、利己的」、「目尻の下がった人」は「消極的で、お人好し、何事にもていねいで控えめな人。また、なんでも気軽に受け止める人だが、あまり機転はきかない」、「目尻の上がった人」は「強い信念と実行力を持って仕事に全力を注ぐ。女性の場合、あまりにもしっかりしすぎるために、夫を凌ぐ傾向がある」とされています。このことから、「キャラクターデザインを知る・つくる・描く」では「大きい眼(軽眼)」を「活発」、「小さい眼(重眼)」を「おとなしい」、「目尻の下がった人」を「やさしい」、「目尻の上がった人」を「こわい」見た目のキャラクターを作成する時に使用する人相として設定をしました。
 人相学の研究内容は、ベースとなるイラスト[※1]を用意してそのイラストを中庸的な存在として、特徴を捉えたい人相の眼と比較し、どのように見えているか実験・分析・考察を行いました。実験結果から「大きい眼(軽眼)」は白目の部分が増え黒目がはっきり見えるようになることでコントラストが高くなり、相対的に黒目が小さくなったように観えるようになること、「小さい眼(重眼)」は白目と黒目の面積が両方とも減り、特に黒目の輪郭のカーブが見えにくくなることがわかりました[※2]。「目尻の下がった人」は下まぶたの上にあがっているアイラインがまっすぐになり、目尻の位置が目頭より下になることでカーブしたアイラインになりました。そして、黒目の上の輪郭が目尻に向かって隠れて見えなくなっていることがわかりました。最後に「目尻の上がった人」は、アイラインが目頭より高い位置になり、目頭から目尻にかけてアイラインがまっすぐになることで、黒目に直線的な辺が出来ました[※3]。
 次に、キャラクターデザインの作成の仕方についてです。
 「キャラクターデザインを知る・つくる・描く」では、主に4つの要素から2つ選んで組み合わせて眼のキャラクターデザインを作成します。はじめに「活発」「おとなしい」から1つ、次に「やさしい」「こわい」から1つ選びます。そして、選んだ4通りの属性について実験結果から得た人相の特徴を文字と絵で説明をしています[※4]。この4通りの属性の特徴を理解し習得した後は、この特徴の強さなどを変えて描き出すことによって様々なキャラクターデザインをつくることができます。

[※1] 人相学の実験で使用しているベースとなる男性の顔

[※2] 左「大きい眼(軽眼)」右「小さい眼(重眼)」

[※3] 左「目尻の下がった人」右「目尻の上がった人」

[※4] 「活発」「おとなしい」×「やさしい」「こわい」の4通りのイラスト

目の絵柄の見つけ方の提案

 絵柄の見つけ方について、重要なことは自分の「描きたい絵柄の眼」や「好きな眼」についてよく知ることだと考えます。今回、1969年〜2020年の眼の絵柄について研究を行い、それを男児、女児、男性、女性向けに分けて描き出しました[※5]。その中から好きと感じる要素を自身で明文化して書き出し、自分の好きな要素に対して文章で理解を深めます。そして、実際に文章を参考に眼を描き出します。ここで、絵を参考にするのではなく文章を参考にする理由は、文字表現を絵に置き換えるという作業をすることによって自分で考えて描き出すことに対する訓練になるからです。最初はうまくいかないかもしれませんが、何回も行うことで「好きな眼」の絵柄を描けるようになります。すでに、目指したい絵柄がある場合は、それを参考に行うようにしても良いと思います。他の使い方として、男児、女児、男性、女性向けのキャラクターを作成したいと考えた時に、参考として使用するということも可能です。

[※5] 1960年〜2020年の男児、女児、男性、女性向けに分けて描いた眼の絵柄。左上から横に1960年〜2020年

「キャラクターデザインを知る・つくる・描く」の可能性

 この「キャラクターデザインを知る・つくる・描く」は今回、自身がキャラクターを描く際に「眼」について特に悩んでいたことから「眼」のキャラクターデザインについて優先して研究を行いました。そして、この研究を通して「眼」の描き方に対する「どのように描けば良い眼が描けるようになるだろう」というネガティブな気持ちが、「こうすれば描けるようになる」というポジティブな気分で絵が描けるようになりました。
 ですが、「キャラクターデザインを知る・つくる・描く」は「眼」で終わりではありません。この研究が「キャラクターデザインを知る・つくる・描く」のはじめの一歩です。今後ほかの人体のパーツについても同じように研究、テキスト化しまとめることで、まだまだあるたくさんの「キャラクターデザインの悩み」を1つずつ解消していけたら良いと考えています。

参考文献

日本顔学会編『顔の百科事典』丸善出版株式会社 2015年9月15日
森一之進『顔つき・表情・しぐさの「顔」の事典』株式会社三笠書房 1983年6月

常松 柚香

好きな授業
グラフィックデザインBのイラスト制作と3DCGのモデリングが楽しかったです。イラストの課題は多かったですが、毎回の添削が大変参考になりました。3DCGモデリングでは3Dソフトを初めて触り難しいものでしたが、良い経験になりました。

学部を振り返って
個人製作と同じくらいグループワークが多かったです。人と関わりながら企画提案や製作をしていくことで、大変な時期がたくさんありました。けれど、悩みながら意見を出し合って企画を作った経験はとても有意義なものになりました。

学部で身につけた力
製作物を作成、発表する際の基本的な操作や作り方、情報収集の仕方、案の出し方、グループワークでの役割分担について身に付けることができたと思います。特に身につけられてよかったのは、動画作成技術です。作品の表現の幅を広げることができました。