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ビジネス

キャッチフレーズ構想論

〜印象深い言葉の裏側〜
17Z1-089 玉木 克尚
日常にあふれる「キャッチフレーズ」。それらは一体どのようにして作られているのだろうか。また、それらの裏では何が動いているのだろうか。
人々を惹きつけ、経済効果を生み出す「魔法の言葉」のメカニズムについて迫る。
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合言葉はリサーチアップ

 街中などで印象的な言葉をひと目見て立ち止まった。そんな経験はないだろうか。言うまでもないが、その現象は、キャッチフレーズ考案者の「策略」にハマってしまっているのである。いわば、あなたはその商品の「お客様」だ。キャッチフレーズには、「標的」となる人間を「捕捉(キャッチ)」する効果がある。それらは一体どのようにして編み出されているのだろうかということについて疑問を抱いたことが、本研究の動機である。ここでは、キャッチフレーズを作るための「策略」や「効果」がどう練り出されるか、それらをどう「言葉」にするかという内容について、参考文献の筆者の意見を交えて述べていく。
 キャッチフレーズを作るためには、厳密な市場調査が必要となる。売り込むものが展開される環境やそれらを求める人がどんな人かを知らなければ、商売にならないからである。商売の価値を決めるのは、ビジネスマンではなく「お客様」である。それに広告を作る目的は、「商品を売り込むこと」だ。いくら見かけが良くても、商品の魅力が伝わらなければ意味がない。そのため、厳密な市場調査が必要なのだ。
 そして、調査の内容を「戦略」に落とし込む。商品を売り込む客層を絞り、彼らをどのような言葉で誘い込むかを決める。ここでは、顧客の人間性や、必要としているものを把握し、それに見合った商品の魅力を確実に伝える必要がある。また、競合品が存在する場合は、それらとどう差別化するかを明記しなくてはいけない。顧客の情報を収集するためには、聞き込み調査を行うほか、「お客様モニター」として、商品を使用してもらう方法がある。それらで得た情報をもとに、商品を売り込んでいくのだ。また、顧客の行動を分析し、どのような告知媒体を用いれば、顧客の目に届くかということも計算に入れる必要がある。それらの工程を経て「戦略」を編み出し、ここから本格的に広報活動が開始される。

客観的意見
他人に商品を売り込むならば、他人目線で物作りをしなければならない。
そのため、その「他人」の生の声が求められるのだ。

もっと、「らしさ」をアピール!

 キャッチフレーズを考案する上で重視すべき点は、一目で「中身や特性がわかる」ということである。つまり、商品そのものが有力な告知媒体でなければならないのだ。そのためには、商品の概要を短い文字列で表現する必要がある。一般的な単語を用いた洒落などを組み込めば、より親しみやすいだろう。その短い文字列の中に、顧客要望や商品概要の分析結果を言い換えたものを放り込む。
 では、どのようにしてネーミングの方向性を決定づけるのだろうか。それには、幾多にも及ぶ構想作業が存在する。自社商品内における位置付けの決定作業や展開する顧客層の検討、顧客が商品を「いつ」「どこで」「何人で」「どのように」
使うかどうかを考える。さもないと、競合品どころか自社製品の中でも埋もれてしまう。顧客へのアピールも大切であるが、他製品との差別化を如何に図るかもまた、重要である。さらに、巷のブームやトレンドを意識し、それらに関わることができなければ、そのまま時代に流されてしまう。顧客の生活様式や意識も、時代の流れに沿って変わっていくからである。このように、市場や顧客の調査のみならず、人間社会そのものにまでも目を向けなければ、良い商品は出来上がらないのだ。
 さらに、「言葉」の生成の方向性の検討も行う。印象深いフレーズを構成するためには大きく分けて2種類の手法を用いる。一つは、商品の第一印象を前面に押し出す「イメージ重視」(以下、「前者」)の手法。もう一つは、商品の大まかな内容をそのまま短い文字列で説明する「説明・納得型」(以下、「後者」)だ。※1 世間にあふれるキャッチフレーズは、ほぼこのどちらかで成り立っている。「前者」は「全米が泣いた!」のように、商品の印象を顧客に付加する形式、一方で、後者は「取手が取れる!」のような、簡単な特徴の説明である。
 このように、「言葉」とデータの合わせ技が、顧客に効くのだ。

言葉の印象
見た目のインパクトの強さはもちろんのこと、見た人に用途や趣旨、設置意図などを理解させる機能も必要だ。

「言葉」を組み立てる

 前述の通り、キャッチフレーズには、「標的」となる人間を「捕捉(キャッチ)」する効果が仕組まれている。そもそも、「キャッチフレーズ」とは、「訴求対象の印象に残るように特徴などを端的に表したメッセージ」のことである。では、どのような言葉が、顧客の印象を引くのだろうか。そこに仕組まれた法則は5つ。まず、「聞き出したまま言う」。次に、「疑問形にする」。三つ目は、「組み合わせる」。四つ目は、「縮める」。最後に、「買った後のストーリーを書く」となる。順を追って解説をしていこう。※2 まずは一つ目。「聞き出したまま」とあるが、これは、商品を利用した人の感想をそのまま使ってしまうという方法だ。「お客様の声」は顧客要望として取り入れることができるため大変心強い。二つ目は、「疑問形にする」。ここでの「疑問形」とは、誘い文句などで用いる「?」のことだ。例えば、居酒屋のレジに「明日も来る?」という文言を置くと、気分の高まった客の再訪欲を高めることができる。三つ目の「組み合わせる」では、商品の見所やキーワードを組み合わせて生成する。「肉汁!歯応え!」と聞くと、分厚いステーキを連想するなどといった印象戦略である。四つめの「縮める」は、「略語」を作るということ。持ち運びのできることがウリの携帯型電話機を「ケータイ」と呼ぶようなものである。そして最後に、「買った後のストーリーを書く」ということ。これは、「これを利用するとあの人はこうなってしまうんだろうな」という想定でのイメージ戦略である。あらゆる機能が使える便利な機械に「他は何も必要ない」などといったフレーズを添えることで、これ一台で全て完結する便利さをアピールすることができる。以上のような法則を用いた上で、顧客・市場調査などで得た情報を盛り込んで「言葉」を生成する。
 印象深い言葉の裏では、奥深き「策略」がある。キャッチフレーズは、「ただの言葉」ではなく、洗練された「仕組み」の上で成り立っているのである。

玉木 克尚

好きな授業
「授業」というもの自体それほど好きではないのですが、強いて言えば「デザインキャリア特別講義」が好きです。
色々な業界の人々から聞く話は、とても新鮮で興味深いものでした。

学部を振り返って
卒業報告展はオンライン開催となりましたが、システムや運用に不備が目立ち、いささか失望しました。またプレゼンでも大勢を盛り上げるようなものをしたかったのですが、昨今の情勢の影響で叶いませんでした。結果、悔いの残る大学生活となりました。

学部で身につけた力
プレゼンテーションの原稿の構築や、資料の作成などで求められる「筋道立てて物事を説明する能力」は、日常生活のあらゆる場面でかなり役立っています。特に、アルバイト先や、趣味の場などではかなり重宝出来る能力です。