カテゴリー
カルチャー

SF映画『インターステラー』のリアリティ

17Z1-083 園部 悟巳
『インターステラー』(13)はリアルな作品であると主張する。なぜならば、ストーリーや制作過程など様々なところで入念な工夫がされているからだ。同時期の宇宙SF映画『ゼロ・グラビティ』(14)と比較し、どんなところが魅力かを様々な角度から追求し、主にリアリティの点から『インターステラー』を再評価するすることが、本研究の目的である。
映像ポップカルチャー作る
プレゼン動画を見る!

『インターステラー』のストーリー設定について

舞台は異常気象による大規模な食糧問題に直面し、人類滅亡の危機にある近未来の地球。トウモロコシ農場を営む元宇宙飛行士のクーパーは、昔の仕事仲間だったブランド教授と地下組織となったNASAで再会し、人類救済のため別の銀河系を目指す有人惑星間航行(インターステラー)するチームに加わることになった。4人のチームで宇宙船エンデュランスに乗って地球を後にし、無事にワームホールを通過して第二の地球を見つけだし、人類を救えるのか・・・これが作品のストーリーである。
 一方、当時『ゼロ・グラビティ』という本作品と似た作品が公開された。この作品は、医療技師のライアンは宇宙ミッションの最中、衛星の破片の飛来に遭遇し、生き残ったライアンは国際宇宙ステーションをめざして地球へ生きて帰るという内容の作品である。
 この2つの作品を比較していくと、次のようなことがわかってくる。『インターステラー』の方は異常気象や食料問題などが描かれ、一方で『ゼロ・グラビティ』の方も、現時点でも起るかもしれないことが描かれ、どちらも現実味のある内容になっている。しかし、人間ドラマの要素が描かれている作品の方が観客により親しめるものに成るのではないだろうか。『ゼロ・グラビティ』では二人の人物だけで映画が作られているが、『インターステラー』では多くの登場人物と様々な人間関係が描かれている。まず、この点で、『ゼロ・グラビティ』よりも『インターステラー』の方を高く評価したい。この2つの作品は、子供から大人まで楽しめるというよりかは、大人が楽しめる作品であるということもわかる。しかし、大人が楽しめる映画の中にも現実味だけが魅力よりかは、ストーリーや人間ドラマに富む作品の方が人気が高い。『インターステラー』では、現実味がありつつ人間ドラマも存在しているため、評価が高くなったのではないかと考えることができる。

クリストファー・ノーラン監督による、世界的な飢饉や地球環境の変化によって人類の滅亡が迫る近未来を舞台に、家族や人類の未来を守るため、未知の宇宙へと旅立っていく元エンジニアの男の姿を描いた作品。
引用元:https://pc.video.dmkt-sp.jp/ti/10010299

キービジュアル引用元
https://av.watch.impress.co.jp/docs/news/1272110.html

『インターステラー』の撮影方法について

撮影には、昔ながらのミニチュア撮影やほぼ実物大である7/8スケールのモデルも作られ、アイスランドのロケ地で俳優たちと一緒に撮影された。宇宙船の背景は、フロント・プロジェクション[※1]で星空やブラックホールがスクリーンに投映されており、船内のコックピットの窓から見える風景の描写にも活用されている。
 フロント・プロジェクションを利用して窓外の風景を描く手法は、80年代ごろまで盛んに用いられていたが、高精度なデジタルのマット合成が普及してからは、姿を消していた。だが、ジョセフ・コシンスキー監督が『オブリビオン』 (13)で復活させて以降、様々な作品に採用されるようになる。理由として、デジタルプロジェクターが普及したことと、セットや衣装の素材が自由に選べるという点があげられる。しかし、フロント・プロジェクションなら素材や色が自由になり、さらに監督や俳優が完成画面をイメージしやすいというのも大きなメリットで、今回はこの点が採用の主な理由となった。また、トウモロコシ畑のシーンではロケーション撮影は行われなかった。実際にトウモロコシはタネから栽培し、畑の広さも約200万平方メートルもあった。さらに、砂嵐のシーンでは巨大な扇風機を設置して実際に強風を巻き起こして砂嵐を巻き起こしている。
 この作品では、CGよりもミニチュアや実物大セットを数多く使い撮影されていることがわかる。ノーラン監督は、CGを完全に嫌っているわけではなく必要に応じて用いている。しかし、あくまで実写で撮ったものをよりリアルな表現に昇華させるための手段の一つに過ぎない。ここでは、まず実写を最優先させるノーランの徹底したこだわりを感じることができる。また、最新の技術だけではなく、昔の映画撮影方法で使われたものを利用することで、より映像をリアルに見せている。このような点でも、『インターステラー』を評価できる。

※1 フロント・プロジェクション
カメラのすぐ前に 透過性の高い鏡を斜め45度に置き、 それに向けて背景の映像を真横から投射する。すると鏡によって反射された映像が役者の背後のスクリーンに映写されることになるので、背景の映像さえ差し替えれば、どんな場所でもスタジオ内での撮影が可能になるというもの。

『インターステラー』の科学的考証について

『インターステラー』では、作中に登場するワームホールやブッラックホールなどが科学的に考証されている。
 本格では、科学コンサルタントを務めたキャップ・ソーンという人物が活躍した。ソーンは理論物理学者で、2017年に重力波検出装置の構築及び重力波発見への決定的な貢献によって、ノーベル物理学賞を受賞している。彼はワームホールを描写するに際して、相対性理論を可能な限り正確に映画に適用するようにした。
 ワームホールは、二つの離れた領域を直接結びつけるトンネルのような時空の構造である。アインシュタインの一般相対性理論における重力場の方程式の答えの一つとして、そのような時空構造が数学的に導かれた。このトンネルを通過すると、理論上は光よりも速く時空の2点間を移動できると考えられている。現実には、そのトンネルはタイムマシンと同様の働きをするがその存在は確認されてはいない。
彼はワームホールやブラックホールを正確に描いた映画は今までにないと語っており、この『インターステラー』は他の宇宙が舞台の映画の中でも、どの作品よりもワームホールやブラックホールについて理論的に詳しく描かれているということがわかる。
 また、当時NHKでブラックホールの科学ドキュメンタリーが世界中でダントツの水準を誇っていたが、この作品はその科学ドキュメンタリーに負けないほどシミュレーションをこなし撮影をしていた。この点からもこの作品が科学的に考証されているということがわかる。
 これらの点から、『インターステラー』は科学的な面でより正確に描かれているということが明確になった。現実に実際に存在している科学的な物事を実証的に検証することによって、映画をよりリアルに見せる必要な手段の1つなのではないかと考える。

園部 悟巳

好きな授業
私が好きな授業は、「コンピュータ表現基礎
自習」です。理由は、今まで使ったことがないIIIustra-torやPhotoshopなどのソフトを学ぶことができ、自分の思い描いたものを表現することができることが楽しかったです。

学部を振り返って
何かをデザインすることや何かを企画することにあたって、たくさんのアイディアを考えることが大切であり、整理しながら進めていくことも重要であると学ぶことができました。

学部で身につけた力
企画表現演習では、とても濃い内容で充実したくさんのことを学ぶことができた授業でした。特にグループワークが多くある授業でいろんな人たちと話す機会が多く、コミュニケーション力が以前よりも向上しましました。