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教育

学習ツール「いろは帳」

かるたの仕組みを活用した記憶の定着を高める学習ツール
17Z1-053 栗山 智希
私は「かるたと記憶の繋がり」について研究を行い、その研究結果を通じて、かるたの仕組みを活用した記憶の定着を高める学習ツール「いろは帳」を考えました。小学生の時に遊んだ「かるた」を今でも鮮明に覚えており、その記憶に残る仕組みを「勉強や学習に活かせるのでは」と思ったため、このような企画に至りました。
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「いろは帳」の仕様について

 今回の研究を通じ、様々な種類のカルタがある中で、「いろはかるた」が最も記憶を高めてくれる性質を持っており、その仕組みを活用し、イメージした冊子なので、「いろは帳」としました。
 高校生・大学生を対象に、覚えることの多い科目(理科や社会など)を、この「いろは帳」を使うことで、覚えたいことをしっかりと、記憶に定着させることが出来ます。
 なお、効果的に利用できるよう「いろは帳説明書」を用意しています。効果的な使用方法などを解説しており、これを元に「いろは帳」を活用してもらうことで、記憶の定着を促進させることが出来ます。

「いろは帳」の使い方の解説。「いろは帳」をこのように活用することで、記憶の定着が促進される。

これらの解説で得られる記憶を高める方法は、日常生活など、他の場面で活用してもらっても良い。

記憶を定着させる3つの仕組み

 この「いろは帳」がなぜ「記憶に強く残る」ものなのか。それは「いろは帳の仕組み」にあります。その仕組みは3つに大別されます。
 1つ目は「読み札の作成」です。「いろはかるた」の読み札の多くは、俳句などのように「五七五のリズム」をとった文章となっています。これは日本人にとって頭に残りやすいリズムにされており、その短い文章に伝えたいことが効果的に盛り込まれています。この「五七五の短い文章」を自ら作成することで、既知の知識との関係が強化され、脳において、深い処理がされます。その結果、強く記憶に残すことが出来ます。
 2つ目は「絵札の作成」です。絵などのイメージは、文章より記憶に残りやすいとされます。また、覚える情報のイメージを創り思い出しやすくする方法を「イメージ化法」といい、絵札に描く際、作成した読み札などを元にイメージを創り出すことで、その効果を発揮します。さらに、学習の対象を絵などに描くことで、記憶力が向上する「描画効果」も発揮され、記憶の定着を促進させます。また、描く際に、手を使うなど「五感」を使って覚えることになるので、より記憶に残りやすいです。
 3つ目は「リハーサルの仕方」です。記憶する対象を何度も繰り返し唱える「リハーサル」は、記憶の定着において最も大事です。記憶する時には、ストレスなど「余計な負荷」はマイナス効果になります。脳は、流れてくる情報の重要性を「刺激の強さや回数」でしか判断できなく、また、思い出すことで他の情報による干渉や上書きなどがなされ、結果的に知識として「再構成」されます。リハーサルには、その効果があります。
 以上3つの仕組みにより、覚える対象をしっかり記憶に残すことができ、その記憶の質も高めることが出来ます。

読み札・絵札の作成は、主にこのような手順となる。

「いろは帳」によるリハーサルの仕方は、主にこのような方法が挙げられる。

実験による効果の検証

 上記で述べた仕組みを踏まえ、実際に「いろは帳」を使った実験を行い、検証しました。実験の概要は、高校生と大学生を対象に、「いろは帳だけを利用」するグループと、「利用しない」グループに分け、10個の用語と、それらの意味や内容について記憶するよう依頼し、どのくらい記憶できたか、1回目と2回目の期間(依頼後3日目、11日目に開催)をあけ、2回テストを行いました。
 実験の結果は、1回目のテストでは両グループの回答率に大差は見られませんでしたが、2回目では「いろは帳だけを利用」するグループの方が、「利用しない」グループより回答率が良く、多くの情報を覚えられていました。
 つまり、「いろは帳」を活用することで、記憶への定着が促進されることが分かり[※1]、その効果があることが証明されました[※2]。

※1 検証後のアンケート
検証後にアンケートを行い、その集計結果も踏まえると、本人たちもその効果を感じられるものとなっていることが確認された。「いろは帳だけを利用」するグループへ「いろは帳を使ってみて覚えやすかったか」、「いろは帳を使ってみて覚えたことを思い出しやすかったか」これら2つの問いに、それぞれ「はい」という回答が全員から得られた。

※2 効果の証明について
今回の実験を行い、より多くの母数を対象に証明することができれば、その信頼性が高まることが期待される。また、「利用しない」グループのメンバー全員が独自で行っていた記憶の仕方は、「見る」覚え方に偏ってしまっていたため、記憶をする際に「書く」という覚え方を行う対象の結果と比較することで、より「いろは帳」の有効性を証明できるのではないかと考える。

栗山 智希

好きな授業
「プロダクトデザインC」です。企画から始まり、実際にカタチにしていき、最後には販売するという、商品製作の苦楽を学べました。やはり、五感を大いに刺激されたことなので、記憶に強く残ってますね。

学部を振り返って
「デザインとは何か?」を知り、常に考えさせられる場でした。4年間で培われたデザインに対する意識や考え、知識等を今後の生活でも活かしつつ、より理解を深めていきたいと思います。

学部で身につけた力
「向上心」と「柔軟性」がより身についたと思います。課題や作品等、時間の許す限り、より良いものに仕上げようとする力、他の人の作品や考えから刺激をもらうなどし、柔軟な姿勢を得ることができたと思います。