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空き家を引き立てるエクステリアデザインの提案

17Z1-016 井上 幹大
私たちが暮らしている町には、年々と空き家が増え続けている。空き家を取り壊してしまうのではなく、リノベーションを行うことでその物件は違った形として残り続けることが出来る。しかし、街を歩く人に、それが外からリノベーション物件だと認識されるのか疑問に思った。物件の外回りをデザインすることで、認識される解決策を提案する。
空間設計社会
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空き家が抱えている問題

 住まいとしての役割を終え、忘れられてしまったかのようにそのまま放置されてしまう空き家。この空き家が現在急速に増加し、大きな社会問題になっている。空き家が増加していく原因には、主に少子高齢化と人口減少という問題が大きく関係していると考えられる。
 空き家にも様々な種類がある。別荘やセカンドハウスとして利用されている二次的住宅、賃貸用の空き家、売却用の空き家、そしてこれらに該当しない空き家などが挙げられる。「該当しない空き家」とは、居住者の死亡や今後取り壊すことになっている空き家のことを指す。
 空き家の一番の問題点は、管理されずに放置された住まいが、地域社会にとって迷惑で危険な存在となる可能性である。誰も管理しない植栽は、蚊をはじめ害虫の発生源となり、道路に散乱した落ち葉は近隣住民を困らせる。老朽化した建物は、シロアリの繁殖場となり、建材落下や倒壊のリスクを招くことがあるため、隣家にとっては脅威になる。さらに、街の景観を損ない、見通しが悪化することで、不法投棄や放火など防犯上の重大なリスクにも繋がりかねない。空き家ができ次第取り壊せば問題はないと考える者もいるだろう。しかし実は、空き家を壊し更地にすることで、固定資産税と都市計画税の金額が跳ね上がるという問題がある。こうした空き家に手を焼いていた行政も、「空家法[※1]」という対策を立てた。空家法を通して、人の出入りの有無や、水道・電気・ガスの使用状況などの調査が行えるようになった。調査の結果で地域住民に影響を及ぼしている場合、「特定空き家」と認定される。所有している空き家が特定空き家として指定されたのち、指導を受けても空き家の状態が改善されない場合は国から勧告が出され、固定資産税の住宅用地特例から除外されることになる。その場合、税金の負担が重くなるので、改善が難しい場合は空き家を解体するか、売却も含めて検討することになる。

※1 空家法
空き家が、地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしていると考えられる場合、行政が所有者に助言や指導、勧告、命令等の措置を行うことが出来るという法である。

リノベーションの良さ

 近年空き家をリノベーションし、店やシェアハウス、新しい住居として利用することが増えてきた。空き家はデメリットばかりではないということになる。空き家をリノベーションするメリットは3つある。
 1つ目は、リノベーションをすれば、自分の洋服を自分の好みで選び組み合わせるように、自分のニーズに応じて自由に自分らしさを表現することが可能になることだ。カタログ化された同じ家のようにならないため、世界で一つだけの住まいに住める。
 2つ目は、物件の選択肢が増えることである。限られた中から選ぶ新築物件とは違い、住みたいエリアの駅の近くや、静かな場所や、水辺で暮らしたいなど、細かな環境の条件を満たす戸建やマンションを探し出せる可能性が十分にある。間取りや内装、設備機器が条件を多少満たしていなくても、新しく変えてしまえばよく、あまり気を使う必要がない。エリアや立地さえ条件を満たせればいいので、対象となる戸建やマンションの範囲を増やすことができる。
 3つ目に、新築を購入する場合の費用と中古物件を購入してリノベーションする場合の費用を比較すると、中古物件を購入してリノベーションする費用の方が、20%~30%ほど安く抑えることができる。コストと住み心地を想定するなら、中古物件を買いリノベーションするほうが理にかなっている。
 これらのメリットがあるために、新築物件に住むよりも、中古物件を購入しリノベーションすることで、自分のライフスタイルに合った住まいに変える人達が増えてきている。しかし売りの物件としては、内装を変えるだけでは外を歩く人にそれがリノベーションされた物件であることは認識されづらいのではと考えた。そこで、リノベーション物件の素晴らしさをより知ってもらうため、それを認知されやすくするためのデザインを提案する。

空き家を引き立てるエクステリアデザインの提案

 外を歩く人に対してよりインパクトを与えられる方法として、「エクステリアデザイン」を行うことでこの問題を解決し、リノベーションをした物件なのではないかと興味を持ってもらえると考えた。エクステリアデザインとは、敷地まわりの構造物である外構を含むデザインのことで、玄関や、ウッドデッキ、フェンス、庭、テラスまでのデザインのことを指す。エクステリアデザインは、見た目だけでなく、防犯にも関係する。例えば、塀で囲われた古い建物は、外から覗かれないというメリットがあるものの、空き巣や泥棒に隠れ場所として使われる面もある。開放感のあるエクステリアデザインにすれば、敷地内に死角が無くなり、空き巣被害などに会いにくくなるだろう。
 今回は、不動産屋が扱っている空き家物件という設定で、デザインプランを提案する。物件の雑草に関する問題点は、防草シートを敷き、その上に人口芝生を設置することで 解決する。防草シートは、植物が生長するエネルギーである太陽の光を遮断して、雑草が生えてこないようにするもの。また人口芝生だけでは、シンプルすぎるので、植栽も設置する。一年草や低木樹などを植えたとしても管理が出来ていないと枯れてしまうので、多肉植物を選んだ。多肉植物は、乾燥地帯に強い植物のため、水やりの回数などは少なめで他の植物よりも管理しやすい。しかしここまで提案してきたアイデアは、日中は綺麗に見えるが、夜になると見えなくなってしまうので、空き家に対する悪いイメージはまだ解決出来ないと考えた。そこで、ソーラ式のスポットライトを設置することで、夜になった時の問題点を解決する。ソーラーライトは、電源がいらないため、エコでもあり、配線を気にせず取り付けることが可能だ。
 こうしたデザインによって空き家物件が認識されるようになり、新築物件とは違った良さを持つ家として、在り続けて欲しいと願っている。

3D昼
外壁部分をフェンスにしたことで、付近に住む人達に認識され、空き巣されにくくなる。

3D夜
夜には、多肉植物や植栽付近でソーラーライトが光るため、防犯対策となる。

井上 幹大

好きな授業
私が好きな授業は、「インテリアデザインC」です。立面図の作成がとても大変でした。この授業を選んだ理由は、これまでインテリアデザインの授業で学んだことを発揮できると思ったからです。

学部を振り返って
デザイン学部の同期は、話しやすい世代でした。それぞれ取り組みたいことがあって、一緒に居て良い意味で刺激になりました。それぞれどんな仕事をしているか話せる日を楽しみにしています。

学部で身につけた力
私は、学部を通して、コミュニケーション力を身につけることが出来ました。幅広い世代で話せる機会などがあり、人と話すことが好きになりました。就職先でも人と関わる仕事に就きます。