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日本の伝統模様の意味を伝える

17Z1-012 伊藤 渚
日本の伝統模様には、1つ1つに様々な意味が込められている。本研究は、そうした日本の伝統模様に込められた意味を人々に伝える事をテーマとしている。調査を踏まえ、日本の伝統模様の意味を活かして作られたグッズを実際に見て模様の意味を楽しみながら購入することができるセレクトショップ「いちまつ」を提案する。
伝統ブランディング雑貨
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研究のきっかけと模様の意味を知るメリット

 私が模様に興味を持ったきっかけは、学生時代の海外旅行の経験である。旅先で様々な模様を目にする経験を通して、模様はその土地のアイデンティティであると思ったのである。日本にも古くから伝わる伝統的な模様があり、それらは日本のアイデンティティとなっている。
 模様についての研究を進めていくうちに、日本の伝統模様と世界の伝統模様では大きな違いがある事が判明した。日本の伝統模様には1つ1つに意味や謂れが込められているのである。これは日本の八百万の神を信仰する「万物に神が宿る」という宗教観からきているものである。この日本独自の考え方が日本の伝統模様を作り出している事に関心を持ち、日本の伝統模様を伝えたいと考えたのである。
 人々が模様の意味を知るメリットは3つある。
 1つ目は、「贈り物に最適なものを選ぶことができる」点である。模様に込められたそれらの意味を知る事で贈り物をする際に最適な意味の模様を選ぶ事ができるようになることが期待できる。
 2つ目は、「状況にあった模様を身につけることができる」点である。模様は着物など身につけるものにもよく使われている。模様の意味を知る事で状況にあった模様を身につけることができる。例えば、成人式に向けて沢山の振袖から自分の好みの色や模様を選ぶという状況がある。その時に、模様の意味を知っていれば、成人式にふさわしい振袖を選ぶことができる。
 3つ目は、「海外に発信することでお土産などの売り上げに繋がる」点である。日本の伝統文様の種類と意味の多さは、世界中を見渡しても突出している。模様の意味を海外の人にも伝えることができれば、縁起の良い意味が込められている模様を使ったお土産を、より多くの人に手に取ってもらえる。
 しかしながら、実際に日本の伝統模様の意味を知る人は少ないという事が調査から判明した。調査では5つの日本の伝統模様に関してのアンケートを行ったが、9割程の人は伝統模様の意味に関していずれも知らないと回答した。

セレクトショップ「いちまつ」の提案

 「日本の伝統模様の意味を伝える」ために、日本の伝統模様の意味を活かして作られたグッズを実際に見て購入できるセレクトショップ「いちまつ」を提案する。
 「いちまつ」の模様の意味を伝える2つのポイントは以下の通りである
 1つ目は、「模様の意味を商品として扱える」という点である。「いちまつ」では、日本の伝統模様の縁起の良い意味に着目し、ギフト商品の展開をしている。例えば、七宝模様保湿クリームは、「子孫繁栄」の意味がある七宝模様とマタニティ用の保湿クリームを掛け合わせ、妊婦さんや妊婦さんにギフトを贈る人を想定したアイテムになっている。このように、模様の意味にちなんだアイテムを取り扱う事で付加価値のある商品にする事ができる。
 2つ目は、「日本の伝統模様を知らない人へのアプローチができる」という点である。「いちまつ」はオンラインショップではなく、実際に店舗を持っている。そのため、日本の伝統模様を知らない人でもショップに立ち寄る事で、実際に伝統模様に触れ、伝統模様を知る事ができる。
 「いちまつ」ではセレクトアイテムとオリジナルアイテムの2つがある。セレクトアイテムは全国各地から多くの模様を使ったアイテムをセレクトし、店内で販売する。一方オリジナルアイテムは、「日本の伝統模様の意味を伝える」というブランドのテーマの元自社開発している。七宝模様保湿クリームの他、事業拡大の意味をもち、経営者をターゲットとした市松模様花瓶、長寿の意味を持ち、年配の方をターゲットとした唐草模様クッション、出戻らないという意味を持ち、門出を迎える人をターゲットとした矢絣模様ネクタイなどがある。

▲「いちまつ」の外装
日本の伝統模様を扱うお店のため、和風な瓦屋根の外装にする。

▲「いちまつ」の内装(1F)
ショップのテーマである「日本の伝統模様の意味を伝える」ために、模様ごとに棚を設置する。模様ごとに棚が分けられている事をわかりやすくするため、棚の上には模様の名前が記されている看板と、それぞれの棚には模様の意味を記しているボードを設置する。成人式などの季節の行事が近づいてきた頃には、店の外から1番目につきやすいディスプレイに期間限定の商品を配置する。

研究を終えて

 この研究の目標は、日本の伝統模様の意味を人が知るきっかけを作る事である。知ってもらうには、相手に知りたいと思わせる何かが必要だ。「いちまつ」は、贈り物と伝統模様を組み合わせる事でそれを実現することを狙っている。贈る側も受け取る側も模様の意味を知ることで繋がることが期待できる。そういう点で「いちまつ」は最も研究目標に適したアイデアであると私は考える。実際にこの卒業研究について、「商品ごとにでなく模様ごとに分けられていて、模様を意識してみる事ができて良い」や「模様のショップは新規性がある」といった意見を聞くことができた。本研究を通して、少しでも多くの人が模様の意味に興味を持ち、模様を楽しんでくれると幸いである。

伊藤 渚

好きな授業
私が好きな授業は、「図像学」です。1年生
の時の授業で、絵画について学ぶものでし
た。この授業を履修してから、美術館に行く
のがより楽しくなりました。

学部を振り返って
デザイン学部は本当に個性豊かな人達の集ま
りだと思います。それも6つの専門分野を選
べるからこその特徴なんじゃないかと思いま
す。色んな人達と関わり、十人十色の考えが
あるのだとこの4年間でとても感じる事がで
きました。

学部で身につけた力
授業全体を通してグループでの活動が多かっ
たため、大変な事もありながら支え合い、沢
山の事を学べたと思います。また、とてもパ
ソコンを使う機会が多いので、かなりパソコ
ンを使えるようになりました。ただ、マック
の持ち運びはそれなりにきついです(笑)