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新型コロナウイルス流行に伴う公共交通機関の感染症対策について

17Z1-007 石井 裕梨
2021年現在も感染拡大が続く新型コロナウイルスの感染症対策を研究し、現状の問題点を、公共交通機関の感染症対策に絞り考察した。3密の中でも密閉に着目した対策が必要だと考えた。本研究では、簡易的な模型を使い車両の空気を効率よく循環させる窓の配置とその実現性について考察した。
空間設計社会
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感染症と感染症対策の歴史について

 感染症とは病原体が体に侵入して症状が出る病気のことをいう。病原体は大きさや構造によって細菌、ウイルス、真菌、寄生虫などに分類される。病原体が体に侵入しても、症状が現れる場合と現れない場合があり、感染症となるかどうかは病原体の感染力と体の抵抗力のバランスで決まる。病原体が体の中に侵入する経路には、大きく分けて垂直感染と水平感染の2種類がある。垂直感染は妊娠中あるいは出産の際に病原体が赤ちゃんに感染することをいい、一般的に母子感染といわれている。水平感染は感染源(人や物)から周囲に広がるもので、接触感染、飛沫感染、空気感染、媒介物感染の4つに大きく分類することができる。
 過去にパンデミックとなった感染症として二つ、ペスト(黒死病)とインフルエンザ(スペインかぜ)がある。ペストは1347年ヨーロッパで大流行し、ヨーロッパ全体での犠牲者は総人口の3分の1とか4分の1といわれている。はっきりと発生源は特定されていないが、14世紀、16世紀-17世紀のパンデミックはヨーロッパ、19世紀末のパンデミックは中国が起源となり世界中に広がったとされる。エルシニア・ペスティス(ペスト菌)はネズミなどの小型げっ歯類に寄生するノミによって媒介され、商船に紛れ込んだネズミが原因となり世界中に広がったとされる。インフルエンザは1918年世界的に大流行し、感染者は5億人、犠牲者は5000万人-1億人といわれている。交通手段の発達により、ペスト流行時とは比べ物にならないほど感染は拡大した。さらに第一次世界大戦中ということもあり、感染の拡大に加え、感染拡大が国によっては重要視されていなかったり、機密情報とされていたりして、感染症対策が遅れたことも原因とされている。このように公共交通機関が感染拡大に与える影響は非常に大きいと考えられる。

ペスト菌イメージ画像

インフルエンザ菌イメージ画像

イメージ画像引用元
https://www3.nhk.or.jp/news/
キービジュアル
https://www.med.or.jp/
ペスト菌イメージ画像

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インフルエンザ菌イメージ画像

電車(鉄道)の現在の感染症対策に対する考察と課題

 感染拡大は人の移動が大きく関わっていると考えられるため、今回は公共交通機関の中でもたくさんの人が利用する電車での感染症対策について考えていく。
 過去の感染症対策と現在の各公共交通機関で行われている感染症対策に大きな違いはない。やはり公共交通機関は密閉性や換気の悪さ、ロックダウン中でも混雑が予想される。だが現在、公共交通機関でクラスター(感染者集団)は発生していないという。その理由としては、マスクの着用率や車内で会話をしないことが挙げられている。これは日本だけではなく世界的に同様の傾向がみられるという。果たして本当にそうなのであろうか。クラスターとは密集、密接、密閉した滞在場所である飲食店やカラオケ、ナイトクラブ、スポーツジム、ライブハウスなどが主になるが、こういった場所は、利用者を特定できるため、感染者が確認された際に、同じ場所にいた集団も特定することができる。一方で、実際に公共交通機関で、集団感染が発生したとしても利用者を特定することが難しいだけなのではないだろうか。上記のような店舗に休業要請や時短営業を要請しているが、公共交通機関でも同様に、もっと感染症対策に力を入れるべきではないのだろうか。特に、現在の電車(鉄道)で一番問題とされているのは通勤電車などの満員電車であるだろう。日本の朝の通勤電車の乗車率は200パーセントを超えるといわれている。あれだけ密集し、密接・密閉されている事実に対して、なぜ問題としていないのだろうか。もっとも、満員電車の問題は、パンデミック前から都市部では問題として扱われており、乗車率を下げる取り組みは2000年前後から続けられている。乗車率を下げるのはかなり難しい問題とすると、満員電車という密集・密接・密封された空間である車内での感染リスクをできるだけ下げる方法を考えなければいけない。本研究では、特に密封された空間という点に着目して対策案を検討した。

電車(鉄道)で現在行われている感染症対策
・「密閉」対策
空調装置等による換気が可能な車両については、当該装置の機能を用いて適切に換気を実施する(空調が自動で作動停止する場合には必要に応じて手動で作動させる)。
それ以外の車両については、窓を開けることも含めて適切に換気を実施する。
換気の状況について、車内や駅構内における放送等を通じて利用者への周知を行う。
・「密集」対策
国土交通省と協力して、地域の実情を踏まえつつ、車内や駅構内における放送等を通じて、テレワーク・時差出勤の利用者への呼びかけを実施する。
都市鉄道については、各事業者において、混雑状況の情報提供に努める。
・「密接」対策
国土交通省と協力し、車内や駅構内における放送等を通じて、利用者に対して、可能な限りのマスク着用の協力を呼びかける。
座席等、指定席販売時の座席位置に関する配慮(係員操作時、乗客操作時の配慮の呼びかけ)、国土交通省と協力した可能な限りのマスク着用及び会話を控えめにすることの協力の呼びかけなど、座席の配置形態や輸送形態等に応じて取りうる方法により、密接した会話などを避けるための対策を実施する。

空気を効率よく循環させる窓の配置

 現在の感染症対策は窓を開けるということが行われているが、窓の開かない車両が増えているということからもっと換気について対策していく必要がある。窓の開かない車両が増えた理由として、開閉可能な窓は部品点数も多くなるため重量やコストがかさみ、メンテナンスにも手間がかかるというところにある。だが全ての窓が開閉できなくなると、停電時に車内の換気ができないという問題からいくつかの窓は開閉できるようになっている。窓を開けるという換気方法は空調が当たり前になる前には当然のように行われていたことだが、現在は寒さなどの環境維持との両立が難しい状況になっている。また雨などの問題もある。今回、私は感染症対策として換気を優先する必要があると考えて空気を効率よく循環させる窓の配置を検討する事とした。また空気を効率よく循環させる窓の位置が特定できることで、窓を開ける広さを最小限に抑えられることで雨の問題も解決できると考える。
 実験に際して、電車と同様の形状の物を活用し、その対象物を移動させた際に、対象物内の空気がどのように動くのかを観察するための実験を行なった。具体的には、ペットボトルの前後左右に穴をあける。穴をあけたペットボトルに線香の煙を充満させ、前方から送風機で一定の風を送り、空気の流れを観察する。①左右に穴をあけたペットボトル、②前後に穴をあけたペットボトル、③前左右に穴をあけたペットボトル、④前後左右に穴をあけたペットボトル、この4つからどのパターンが一番空気の入れ替わりが早いかを観察した。
 ④の状態では一番空気の入れ替わりが早い結果になった。後部に空気が溜まることもなく、排出口が小さく逆流が起き、中でぐるぐると気流が起こることもなかった。空気の入れ替わりには、前面に空気の入口があり、側面や後面が出口になることで空気の循環の早さが変わることがわかった。

①実験画像

④実験画像

石井 裕梨

好きな授業
好きな授業はポップカルチャービジネス論です。この授業はオタクな文化を授業で紹介されることが多く、良くも悪くも学校の授業で取り扱う題目らしくなくて好きでした。

学部を振り返って
初めてのことばかりの中、授業についていくのが本当に大変でした。喜美候部くんに助けてもらいながら課題をやった記憶しかありません。

学部で身につけた力
入学するまではパソコン音痴でしたが、この学部ではパソコンでの作業が多く、いやでもパソコンに触れていたのでパソコン作業の抵抗感がなくなりました。