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カルチャー

「動き」に着目したアニメーションのリアリティについて

17Z1-002 足立 達也
映像におけるリアリティとは何でしょうか。
映画の感想を検索すると、「この映画はリアリティがない」
「リアリティがあるアニメだった」などの言葉を見ると思い
ます。映像におけるリアリティとは何か、どう生み出される
のかを明らかにし、これからの映像表現の発展に繋げようと
考え、研究しました。
キャラクターポップカルチャー映像
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映像が作り出しているものは何なのか?

 本研究では、実写とアニメーションの2つの映像メディアの特性を調べました。実写映像の場合は、スタジオなどの現実の空間に人・物を配置し、実際の動きを撮影し記録します。そのため、映像を観る人は、動いている「事実」を認識します。一方で、アニメーションの場合は、絵を連続して見せることで成立します。つまり映像を見る人は、「動いて見える」ように知覚するのです。動いている「事実」として認識するのか。動いて「見える」ように感じるのか。2つのメディアにおいて認識レベルで違いがあるものの、映像が作り出しているものは共通しています。どちらも「動きの造形」を創造しているのです。
 この「動きの造形」がどのように形成されていったのかを、アニメーション業界大手のディズニースタジオの制作の歴史から紐解いていきます。1930年より前、ディズニーのアニメーターは、生身のモデルを参考にしていましたが、より複雑な動きが求められてくると、立っているだけのモデルでは不十分と考えました。そこ
で当時、演劇で活躍していた役者をスタジオに招き、キャラクターを演じさせ、その動きを描くようになりました。すると、個性がないキャラクターに、コンセプトのある強烈で個性的な動きを表現できるようになったのです。役者の「演技」から動きを造形することにより、リアリティを付加することが可能になったのです。
 調査をしていくうちに、近年、実写とアニメーションの境界が曖昧になっていることが分かりました。実写映画は実写でありながら、コンピュータグラフィックスの発達により、まるでアニメーションかのようなフィクション的な映像を作り出しており、アニメ映画はアニメーションでありながら、過剰に誇張された動きではなく、現実の動きに近づいた映像表現が増えてきています。「動きの造形」において、実写とアニメのリアリティには同一の基準点があり、技術の発展によって類似した表現になってきているのではないかと考えられます。

実写の場合、現実の動きを「再現」するのが唯一無二の特徴。アニメーションの場合、元の動きが存在しないので、動きの「再現」で
なく、クリエーターが新たに「生命」を創造するのである。

フランク・トーマス、オーリー・ジョンストン 『Disney Animation The Illusion of Life
生命を吹き込む魔法』 より。役者の表情の作り方、クセや細かな動きから表現される「演技」を観察する。そこからキャラクターの動きを作るので、セリフがなくても、個性が生み出される。

3つのアニメーション映像による比較・分析

 そこで、私は「歩き」「早歩き」「走り」3つのパターンの違う動きのアニメーション映像を使って、比較・検証する企画を考えました。動画を見ながら、実写らしい映像はどれか、アニメらしい映像はどれか、考えてみてください。実は、3つの映像は全て、実写の動きを基に制作したアニメーション映像なのです。明星大学の学生20名にアンケートをして集計した結果が、上記の通りです。
 「歩き」は、実写映像をもとに制作しているのに関わらず、実写らしく感じた人は4人しかいませんでした。私たちは「動き」そのものでリアリティを感じるのではなく、身体的特徴や服装などの外的要因でリアリティを感じると考えられます。
 「走り」は、実写・アニメーションのどちらとも、適正は高いです。実写作品においてアニメーション的に見せることができ、その逆も可能ということです。
 「早歩き」は、他の動きに比べて、アニメらしく感じる人が圧倒的に少ないという結果でした。また実写においても得票数が低いことから、実写・アニメいずれの領域においても未開拓のアクションであることがわかりました。

「早歩き」に関して、アニメらしく感じるのはわずか5%という結果になった。他の動きに比べ、「早歩き」という動きがもつ特徴を
まだ明確化出来ていないため、実写・アニメの制作現場で使用されないのではないか。

検証結果、これからの映像表現について

 検証の結果、「走り」には、実写とアニメのリアリティにおいて、同一の基準点が存在することがわかりました。そして、まだ実写とアニメの基準点が明確化していない「動き」があることもわかりました。本研究では、早歩きがもっとも映像で使われていないアクションだと判明しました。
 「早歩き」のように未開拓な動きをうまく活用し、「動きの造形」を制作することができれば、これからの映像作品において、新しい映像表現を生み出せるのではないでしょうか?

足立 達也

好きな授業
好きな授業は、「グラフィックデザインC」
です。仮想企業を想定したブランドデザイン
制作をしました。企業理念やコンセプトを、
徹底的に調査・分析した上で、プロダクトや
ロゴの色や造形を考えるので、大変でしたが
その分、やりがいがありました。

学部を振り返って
グラフィック・プロダクト・映像・企画など
様々なジャンルに、デザインを応用しながら
挑んだ4年間でした。より良いものを生み出
すには時間をかける必要がありますが、その
先に素晴らしい結果が待ってるでしょう。

学部で身につけた力
自ら行動していく力を身につけられました。
デザイン学部では個人制作以外にも、チーム
で企画提案をする課題が多いです。自分にし
か出来ないことを見つけ、行動する事を心に
刻みながら、授業に取り組んでいくと自然と
結果が出てくると思います。